大広田アコギの会

  私の推奨盤  大広田アコギの会メンバーがお勧めの音源を熱く語ります!


このページでは大広田アコギの会のメンバーお勧めの音盤を 邦楽洋楽 に分けて紹介します。

【 邦楽 】

夢供養(ゆめくよう) / さだまさし
 昭和 54 年に第 21 回日本レコード大賞ベスト・アルバム賞を受けている本作。ギターを弾き始めた頃、よくレコードと一緒に弾いたものです。今更推薦するのもどうかと思いますが、懐かしいのとあの頃発売されたアルバムの中では収録曲が充実していると思うので挙げてみます。
 「唐八景-序」と「風の篝火(かがりび)」は 2 つで 1 つと思ってます。「風の篝火」のイントロのギターを練習したけど未だに弾けません(泣)。「歳時記(ダイアリィ)」はこのアルバム中で最も好きな曲でした。私にとっては歌詞もメロディーも文句の付けようがない完成度の高い曲。2 本のギターで奏でられるイントロも 1 弦で G → #F → E → #F と辿っていくアルペジオも○。「パンプキン・パイとシナモン・ティー」は「雨やどり」や「敗戦投手」の様なコミカルな歌詞がやたら細かい譜割のメロディーにのっている曲で、スリーフィンガーを練習するにはぴったりでした。カポなしの C で書かれた譜面とカポ 5 の G で弾く譜面がありましたが、私は新譜ジャーナルに掲載された譜面が前者だったのでそちらで練習してました。そういえば「待つわ」の「あみん」の名前の由来はこの曲の歌詞に出てくるコーヒーベーカリー「安眠(あみん)」でしたよね、確か。「まほろば」はライブで聴いたときの最後の「まんげつぅ〜!」という絶叫が耳に残っています。「療養所(サナトリウム)」こういう情景を歌わせたらさだまさしの右に出る人はいません。「思い通りにとべない心と動かぬ手足、抱きしめて燃え残る夢達」ですもん。「春告鳥」このような曲をアルバムに残せるのも、さだまさししかいないのではないでしょうか。「立ち止まった素描画(デッサン)」これだけは当時から浮いて聴こえました。アルバムに 1 曲位はアップテンポの曲を入れようということだったのでしょうか。「空蝉」老夫婦が田舎の駅の待合室でじっと息子の帰りを待っている。しかし容赦なく日は落ち、駅員が「もう汽車は来ません」と告げる。それだけのことなのにいろいろ想像させて重い曲です。「木根川橋」は聴いていた当時はなんてことない歌でした。今もそうですけど。でも、なんてことのない曲ほど難しいとも言いますしね。さて、この曲はスリーフィンガーで弾きますか?それともストロークで通しますか?「ひき潮」アルバムの最後を締めくくる佳曲です。
 それにしてもこの頃のアルバムはギターが伴奏のメインになっていて、コピーする曲には事欠きませんでした。
P.S. 改めて「歳時記」を聴いてみたら、こりゃ四畳半フォークですね。さだまさし版の神田川。一方、あの頃あまり好きではなかった「療養所」は今聴くと泣けました。先生、時の流れってそんなもんすかねぇ。(や)
Fried Pride / フライド・プライド
 フライド・プライドは、ボーカリスト SHIHO(金沢志保)とギタリスト 横田明紀男の 2 人からなるジャズユニットです。ジャズユニットと書きましたが、彼らをあえて分類すればジャズになるかな?という程度です。「分類すること」が対象を適確に把握するための大事な手法であることは確かですが、このアルバムに限らず、フライド・プライドの音楽を聴いていると音楽でありさえすればジャンルなんてどうでもいいんだという気がしてきます。彼らもインタビューで「音楽のジャンルって、CD を買う人には便利でも、演奏する側には関係ないもの」と言ってますし。
 さて、これはそんな彼らのデビュー・アルバム。デビュー・アルバムにしてジャズの名門レーベル「Concord」から発表されたことでも話題になりました。ジャズ系のスタンダードナンバーからポップス、R&B、オリジナル曲がバランスよく選曲されています。曲によってはパーカッションやチェロ、弦楽四重奏団が加わっていますが、基本的にボーカル+ギターというシンプルな編成で、それ故ごまかしのきかないスリリングな演奏が聴けます。様々な「ジャンル」の曲を自分のものにして歌う SHIHO のボーカルも非常に魅力的ですが、一方、横田明紀夫のギター・テクニックもすごい。凄まじい速さでベース・ラインも合わせて演奏する、力みなぎるプレイに圧倒されてしまいます。特に 9 曲目のローリング・ストーンズの曲なんてノリが最高!
 なお、このアルバムは Swing Journal 誌の「ゴールドディスク賞」を受賞しています。(や)
孤独の太陽 / 桑田佳祐
 このアルバムはサザンオールスターズをイメージして聴くと、1 曲目「漫画ドリーム」から期待を裏切られるかも知れません。魂の唄(歌より唄の方が雰囲気です)をギター 1 本のシンプルなバックで譜割を無視したかのように、まるで怒鳴りつけるかのように、歌っています。この後も、昭和のフォークロックな「しゃあない節」、これぞ日本のブルース、演歌も怖くないぞ「月」、2 台のスリーフィンガーがちょっとチープな「鏡」、サウンドは一番サザンぽいけど詩の内容は重たい「飛べないモスキート(MOSQUITO)」、ギター 1 本で歌われる悲しい「僕の父さん」、直球勝負だけど SE がいい味出してる「真夜中のダンディー」、皮肉か?風刺か?とにかく痛快な「すべての歌に懺悔しな!!」、ハーモニカが沁みてきます、アルバムタイトル曲の「孤独の太陽」、社会に対する恨み辛みを叫んで「貧乏ブルース」、ガットギターのアルペジオが曲によく合ってる「JOURNEY」などなど、アルバムの全体がギター中心のシンプルなアレンジなので唄がよく聞こえます。陳腐な言い回しですが「骨太のロックを聴かせてくれるアルバム」というところでしょうか。ギターはアルバムを通して小倉博和氏。ハーモニカは桑田圭祐。私もハーモニカを吹きたくなってきた。練習しようかな。教えて > 中村さん(や)
Summer breeze / 原田知世
 問:何故ここに原田知世? 答:好きだから... ってそれを言っちゃあ身も蓋もないので、大広田アコギの会的にこのアルバムの紹介を。
 このアルバムは、アコースティックギター・デュオのゴンチチをサウンドプロデューサーに迎えた洋楽カバー集です。彼女のボーカルは、メリハリとかパワーとか、そういう歌唱力には無縁ですが、抑制の効いた透明感のあるボーカルがなかなか素敵です。ゴンチチの作り出すサウンドとの相性がとてもよくて、曲の中で彼女のボーカルはバッキングと一体となりつつもしっかりとした存在感を示しています。アレンジはアコースティックギターをふんだんに取り入れた温度感の低いボサノバ風で、とっても爽やか。アコースティックギター好きなら聴いておいて損はないアレンジに仕上がっています。一方、洋楽カバー集としては選曲の妙が光ります。60 〜 70 年代の名曲揃いで、懐かしさがおやじ心をくすぐります。ランディー・ヴァンウォーマーの「Just When I Needed You Most(アメリカン・モーニング)」(1979年)、ビージーズの「How Deep Is Your Love(愛はきらめきの中に)」(1978年)、サイモン&ガーファンクルの「Scarborough Fair」(1966年)、キャロル・キング「You've Got A Friend(君の友だち)」(1971年)など。どうです?やたら珈琲を飲みたくなったり、ディスコでフィーヴァーしたくなったりしませんか? 個人的には、パティ・オースチンの「Say You Love Me(愛していると言って)」(1976年)、ボビー・ヘブの「Sunny」(1966年)が楽しめました。
 トーレ・ヨハンソンとのコラボレートで生まれたスウェディッシュ・ポップから次の段階へと進んだ原田知世の好盤。癒し系のアルバムとして如何ですか? うつな気分にも効くらしいですよ。以上「何度聴いても飽きない夏のお友達アルバム」の紹介でした。(や)


おやつ、おやつA遠足 / 渡辺香津美
 渡辺香津美のアコースティックギター・パフォーマンス集。渡辺香津美と言えば 17 歳でプロデビューをしたエレクトリック、アコースティック何でもござれの日本のトップ・ギタリスト。その器用さ故か、節操が無いとか言う人もいますけど、興味の赴くままにどん欲に様々な音楽に取り組むところは素晴らしいと思います。このアルバムでも選曲の幅が広い、広い。そう、音楽に国境とかジャンルとか時代という壁はないんです。あるとすればそれは自分の頭の中で勝手に作り上げているだけで。
 さて、アルバムは先ずクラシックからアンドレス・セゴビアで「PRELUDE IN CHORDS」。譜割を見ると簡単そうなんですけど、ちゃんと聴かせるように弾くのは結構大変。ジャズからセロニアス・モンクの「CLEOPATORA'S DREAM」。日本で一番有名なジャズ曲。ピアノとギターのデュオというフォーマットで緊張感のうちに進んでいくこの曲はギターの可能性を感じさせてくれます。ギターは楽器の王様ピアノに負けないんですね。ブラジル音楽から「SAMBA DE ASTRONAUTA」。J.ペルナンコブの「鐘のひびき」を間にさらりと入れて、リズムに乗った歯切れの良い演奏です。ポップスからは、バート・バカラックとハル・ディビッドのコンビによる名曲「I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN(恋よ、さようなら)」、ビートルズの「THE FOOL ON THE HILL」と坂本九「上を向いて歩こう」。「I'LL NEVER FALL IN LOVE AGAIN」はテーマとアドリブパートの対比が素敵。「THE FOOL ON THE HILL」はジャズテイストでアレンジするとこうなるのかという勉強になります。「上を向いて歩こう」のギターはこれぞ歌伴のお手本とも言える演奏。ということで Guitar Magazine のスコアを参考に「上を向いて歩こう」を練習中です。映画音楽からは「ニュー・シネマ・パラダイス」。メランコリックなメロディーがクラリネットとギターのデュオにぴったり合っている感じ。ラリー・コリエルとのギターデュオ「NEKOVITAN X」は相変わらずリズムとメロディーの掛け合いが楽しい。そして勿論「TO CHI KA」などのオリジナルも新しいアレンジで聴かせてくれます。他にウェイン・ショーターの「DIANA」など、テンポ・ルバートに弱い私にとって難解なものもありますが、全体通して聴くとアコースティックの心地よさが充分堪能できるアルバムです。タイトル「おやつ」に偽りなし。
 ただ、ちょっと音が汚く感じることがあります。左手が指板を滑る音が耳障りだったり、ピッキングが強すぎるのか、右手の爪が弦に当たる角度がよくないんじゃないかなぁ。勿論そんな偉そうなことが言える立場じゃないのは重々承知の助ですけど、ギターに限らず撥弦楽器を弾くときは気を付けなければいけませんね。
 さて、姉妹品の「おやつ A 遠足」も推薦しておきます。こちらはアジアンテイストいっぱいの作品。特に「もつけ」、「こきりこ節」は必聴。(や)

【 洋楽 】

FRIDAY NIGHT IN SAN FRANCISCO 〜 スーパー・ギター・トリオ・ライヴ!
 アル・ディメオラとパコ・デ・ルシアとジョン・マクラフリン。スーパー・ギター・トリオの組み合わせはいくつかありますが、やっぱりこの 3 人と思わせる最高のライブ・パフォーマンスです。
 先ず、アルとパコによる 11 分 30 秒に及ぶ「地中海の舞踏/広い河」。後半の大盛り上がりに向けて、アルとパコが丁々発止と繰り出すフレーズのスリリングなことといったら! そしてこの音。パコ・デ・ルシアが指で弾いているなんてとても思えません。怒涛のアポヤンド。次にリラックスしたギターの掛け合いが微笑ましい(?)ジョンとアルによる「黒い森」。この辺は余裕ですよね。本当に楽しそうです。羨ましい。次はジョンとパコによる「フレボ・ラスガド」。このアルバムの中では落ち着いた印象の演奏ですが、繰り出されるフレーズは超絶そのもの。両者のタイム感がしっかり合致していないととてもできない技でしょう。そしてライブの最後はトリオで演奏する「幻想組曲」。イントロの元気の良い早弾きから、一転落ち着いた演奏になり、徐々に盛りあがって後半の火の出るような 3 人のギターバトルが最高です。超気持ちいい。
 このライブ・パフォーマンスは 1980 年 12 月 5 日にサンフランシスコで行われました。この文章を書いているのは 2004 年ですから四半世紀も前のことになるのですが、ある意味これを越えるギターアンサンブルはないんじゃないでしょうか(少なくとも私は知らない)。本当にこのアルバムに収められたエネルギーは凄いです。聴く度に元気づけられました。(や)
hell freezes over / EAGLES
 実に 14 年ぶりに発表された EAGLES の新作。アルバムのトップを飾る軽快なロックンロール「Get Over It」やじんわりと歌が響いてくるカントリー調の「The Girl From Yesterday」もいいけれど、やっぱり何と言っても「Hotel California」のアコースティック・バージョンが白眉。世界中で大ヒットし、完成されたこの曲に新たなアレンジを施すのはかなり大変なことだったと推測しますが、冒頭のちょっとスパニッシュな入りからラストのあの有名なツイン・リードまで、一気に聴かせます。
 なお、このときのライブ映像を収めた DVD があります。それを見ると A.Guitar は Takamine のエレアコを使ってライン録りしているようですが、いい音してます(特にグレン・フライ)。(や)
unplugged / bryan adams
 永遠のロックンローラー、死ぬまで 18 才のブライアン・アダムス。これは彼が MTV の UNPLUGED に出演したときのライブ・アルバムです。彼の曲はアレンジが派手なので激しい曲に聴こえますが(ロックですから)、実は意外にシンプルなメロディラインであり、UNPLUGGED なアレンジで映える曲だと思います。
 先ずは 1 曲目の「summer of 69」。日本語タイトル「思い出のサマー」はなんとかならんのかというのは置いといて、A.Guitar だけのバッキングから急に Drum が入って一気に盛り上がるところ、好きです。シンプルながら力強いメロディーの「back to you」。スライドギターがいい味だしてます。ストリングスが大フューチャーされた「18 yil die」。そのアレンジに驚くだけでなく、プロが学生アマチュアと競演するという企画もうれしいですね。そしてラストの「i'll always be right there」。これを聴くと A.Guitar 1 本の弾き語りは唄 80 のギター 20 位なのかな、と思います。(や)
シェエラザード&ボレロ / LARRY CORYELL
 ジャズ・フュージョン界の巨匠、ラリー・コリエル。彼は渡辺香津美と並ぶ私のギター・ヒーローなのです。さて、ラリー・コリエルは活動当初エレクトリックを操っていましたが、アコースティックの豊かな表現力に魅せられたのか 70 年代半ばからアコースティック 1 本のライブをやったり(「ヨーロッパの印象」はかっこよかった)、スーパー・ギター・トリオに参加したり、山下和仁とデュオで演奏したりと、様々なアプローチでアコースティック・ギターの可能性を追求しました。ここで紹介するアルバムはその集大成ともいえるもので、クラシックの大曲をギター 1 本で表現するという無謀な(?)挑戦の 1 つの成果です。CD 化されたときに LP 2 枚分の作品が収められました。
 リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」は原曲をそのまま再現するのではなく(そんなことは不可能)、ギターに置き換えたときに最適なアレンジになるように編曲しているようです。「シェエラザード」のギター譜が現代ギター社から発行されていますが、速いパッセージや複雑なリズムを刻む部分があちこちにあり、どの楽章でもいいですが、1 曲弾き通すのは譜面があってもなかなか出来るもんじゃありません(これは弾けなった私の言い訳)。ラヴェルの「ボレロ」はオベーションの 12 弦をボレロ用の特殊な調弦で弾いています。単調なメロディーが繰り返すこの曲には、それ故に奏者のインスピレーションを呼び起こす魅力があるようで、完全にラリー・コリエルのボレロになっています。特に後半の盛り上げ方が素晴らしいと思います。押尾コータローのボレロと聴き比べるのもこれまた一興かと。
 ラリー・コリエルのアコースティックギター・パフォーマンスが聴けるアルバムとしては他に「トリビュータリーズ」や「テゥー・フォー・ザ・ロード」などがあり、これ両方お薦めです。機会があれば是非聴いてみて下さい。(や)

いろんな話題に戻る